はじめまして。ファイナンシャルプランナーの海田幹子と申します。今回は、老後資金の準備方法について30代、40代、50代の年代に分けてご紹介します。
老後の資金の準備はしていますか?
突然ですが、老後の資金の準備はしていますか?老後資金について不安はあってもどうすれば良いかわからず、何もしていない人もいるのではないでしょうか。「人生100年時代」と言われている今、老後の期間は平均寿命が70歳代だった1980年頃と比べると約10年長くなっているので、老後資金は計画的に準備していくことが大切です。今回は、年代別に老後資金の準備方法についていっしょに考えていきましょう。
年金だけじゃ足りないの?老後の資金は一体いくら必要?
老後資金に2000万円が必要って本当?
2019年に金融庁の報告書が発端になった「老後資金2000万円問題」。総務省が発表した家計調査をもとに試算すると、その報告書には老後の資金は年金以外に2000万円ほど準備が必要だという内容が書かれていました。ニュースで大きく取り上げられましたが、本当なのでしょうか?詳しく見てみましょう。
なぜ老後に資金を用意しておく必要があるの?
年金だけの場合の収入と支出を考える
老後の定義は、これと決まっているものはなく、人それぞれの考え方によって異なります。定年退職をする60歳から老後という人もいれば、公的年金が満額受給できる65歳から老後という人もいるでしょう。老後は、多くの人が60~70歳ほどで迎えることとなります。
一般的なサラリーマン家庭の夫婦で老後の試算をしてみましょう。
サラリーマン家庭の公的年金月額(67歳以下・夫婦合算):220,724円
高齢夫婦無職世帯の実支出:264,707 円
収入(公的年金月額)-実支出=-43,983円
※以下を参考に算出しています
出典:「令和2年度の年金額改定について」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/000588114.pdf
出典:「平成30年 家計調査報告(家計収支編)」(総務省)
https://www.stat.go.jp/data/kakei/2018np/gaikyo/pdf/gk02.pdf
年金だけだと赤字になる可能性がある
収入(公的年金)と支出を比べてみると、支出が収入を上回っています。つまり、公的年金の不足分は貯蓄などで補う必要があるということです。この数字はあくまでも平均なので、収入や支出は人によってそれぞれ違いますが、公的年金以外にも老後の蓄えは必要と思っておいた方が良いでしょう。
老後の資金は1000万円準備が必要
上で表示した夫婦の例で、老後資金の必要額を考えてみましょう。
ポイント!月々必要な老後資金は?
[高齢夫婦無職世帯の月額不足金額]
支出-収入=264,707 円-220,724円=43,983円
平成30年簡易生命表の結果を見ると、男性の平均寿命は 81.25 年、女性の平均寿命は 87.32 年ですが、自分の寿命は誰にもわからないので、長生きする未来を仮定しておくと安心です。今回は、65歳から年金受給を始め100歳まで生きると仮定しましょう。
出典:「平成30年簡易生命表」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/dl/life18-02.pdf
老後が35年とすると夫婦で1847万円必要
老後の公的年金以外の不足合計金額は
43,983円×12ヶ月×35年=4,217,700円=18,472,860円
老後の公的年金以外の不足合計金額は18,472,860円となり、「老後資金2000万円問題」はなかなか現実的な数字といえるでしょう。趣味や娯楽を充実させたい人は、さらに資金を蓄えておいた方が良さそうですね。
すべてを貯蓄で賄う必要はない
では、足りない老後資金は全部貯蓄でまかなうのかというと、そうではありません。退職金を老後資金にあてることもできますし、65歳以上でも働くことで収入を増やすことができます。大きすぎる金額に尻込みせず、いろんな選択肢があることを覚えておいてくださいね。
足りない老後資金の準備方法5つ
ここで、老後資金の主な準備方法を5つ紹介します。初心者にもおすすめの方法を選んでみました。
iDeCo(イデコ)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金のことです。毎月掛け金を支払い、iDeCo用の定期貯金や投資信託などの金融商品を選んで運用します。一番の魅力は、掛け金の全額が所得控除になることで、運用利益も非課税です(ただし、掛け金の上限あり)。 原則として60歳まで引き出すことができませんが、老後資金の準備として確実に貯めることができます。
まずは、証券会社や銀行などでiDeCo口座を開設することから始めましょう。
個人年金保険
月払いや年払いで保険料を支払うことで、老後に分割で保険金を受け取ることができる個人年金保険。支払った保険料は個人年金保険料控除が利用できるので、税金の節約になります。商品ごとに受け取り期間や金額が違うので、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
つみたてNISA
つみたてNISA(少額投資非課税制度)は、最長20年間、年40万円までの少額投資に限り、投資で得た利益が非課税になる制度。つみたてNISAの商品ラインナップは「購入手数料が無料」や「信託報酬が低い」といった、厳しい審査を通ったものばかりなので、初心者でも始めやすいのが特徴です。
途中解約もできますが、長期のつみたてが基本なので、老後資金の準備に適しています。まずは、銀行や証券会社でつみたてNISA口座を開設するところから始めましょう。
終身保険
被保険者が死亡したときに保険金を受け取れる終身保険。一生涯保障が続く保険ですが、支払い終了後に解約すると解約返戻金を受け取ることができます。解約返戻金は支払い合計金額よりも高くなることが多いですが、金額は保険によって差があるので、契約前に解約返戻金額をしっかり確認しておきましょう。
定期預金・預貯金
「老後までお金を引き出せないのは困る」という人は預貯金で準備することもできます。利息は心もとないものが多いですが、いざというときにすぐに引き出せるのは大きなメリットでしょう。少しでも利率の良い定期預金などを利用するのがおすすめです。
年代別で考える老後資金の準備方法
老後の準備方法はたくさんありますが、老後までの準備期間は年齢によって違うため、その人の年代に合った適切な方法を選ぶことが大切です。そこで、年代別の老後資金準備方法を紹介します。
30歳代の老後資金準備方法
30歳代の老後までの期間
30代は老後まで30年ほど時間があり、無理せずコツコツ蓄えることができるので、老後資金準備を始めるのに適しています。この時期からの準備をおすすめするファイナンシャルプランナーも多いです。
30歳代が老後資金2000万円ためるには?
老後資金2000万円を貯めるとすると、月々約5.5万円を30年間貯めることになります。
30歳代おすすめの老後資金準備方法
準備期間がたっぷりあるので、終身保険や個人年金も始めやすいですが、まずは税制優遇と運用利益の税金がかからない「iDeCo(イデコ)」、余力があればつみたてNISAも検討してみましょう。
iDeCoやつみたてNISAでは、預貯金より高い利回りが見込める投資信託などがおすすめです。長期につみたてることで、少しずつ成長し続けている世界経済の恩恵を受けながら、資産を増やすことができるかもしれません。
iDeCoには国民年金の加入状態によって月々の掛け金上限が1.2万円~6.8万円、つみたてNISAは年間40万円まで(月当たり約3.3万円)という制約があるため、いろんな方法を織り交ぜて準備していくのがおすすめです。
40歳代の老後資金準備方法
40歳代の老後までの期間
40代の人は老後まで20年ほどです。しかし、40代の方は、生活費や教育費、親の介護などで家計が圧迫されていて、老後のための貯蓄どころではないという人も多いかもしれません。
40歳代が老後資金2000万円ためるには?
老後までの20年間で2000万円を貯めると仮定すると、月々の貯蓄額は約8.3万円です。
40歳代おすすめの老後資金準備方法
40代の人にまずして欲しいことは、老後の生活費の予想と退職金の把握です。 その2つを元に老後資金の準備金額を決めましょう。しっかりと目標金額を定めることは、貯蓄のやる気にもつながります。iDeCoは65歳まで加入できるので、40代でもおすすめです。しかし、iDeCoだけでは足りないので、生活費の無駄を省き先取り貯金やつみたてNISA、貯蓄性のある保険も視野に入れてみましょう。
50歳代の老後資金準備方法
50歳代の老後までの期間
老後まで10年、最後の貯めどきになります。50代は子育てが一段落して、家計に余裕が出る人も増えてくる年代です。
50歳代が老後資金2000万円ためるには?
老後までの10年で2000万円を貯めるとなると、月々の貯蓄額は約16.6万円です。
50歳代おすすめの老後資金準備方法
50代で老後資金が乏しい人は、40代で紹介した老後の生活費の予想と退職金の把握に加え、老後も働くという選択肢を考えても良いかもしれません。
専業主婦(主夫)の人は、50代からでも働き始めれば、世帯収入がアップするのでより老後資金の準備が進められます。50代の人もiDeCoを活用しながら、すぐに引き出せる預貯金でも老後資金として貯蓄ができると良いですね。
まとめ
- 自分の年齢に合う方法で老後の資金を準備しよう!
- 公的年金だけでは長い老後を乗り切ることは、なかなか難しい世の中です。老後の資金は早めに準備し始めることに越したことはないですが、何歳からでも頑張れば着実に貯まっていきます。老後資金の準備方法は数多くあるので、自分の年齢に合った方法を選択し、老後に備えていきましょう。
■ 年代別早見表 ■
年代別 | 期間 | 2000万円貯金 月々いくら? |
おすすめの 準備方法 |
---|---|---|---|
30歳代 | 30年 | 約5.5万円 | iDeCoやつみたてNISA(預貯金より高い利回りが見込める投資信託がおすすめ) |
40歳代 | 20年 | 約8.3万円 | 具体的な退職金の試算。iDeCoや貯蓄性のある保険でためつつ、生活費の無駄をカットし貯金に回す |
50歳代 | 10年 | 約16.6万円 | 具体的な退職金の試算。また、働くことでの世帯収入の増加も要検討。iDeCoは65歳まで可能なのでこちらもおすすめ |